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売買できない日照権を保障することによって、高度利用や不燃化が阻害される結果、災害時に人々の命が危険にさらされるとしたら、これは本末転倒といわざるをえない。
これまで述べてきた都市の高度利用を促進すべきであるという議論に対して、都市環境の悪化を理由に反対する人々がいる。 それには、次のような背景がある。
交通量の増加にともなって、騒音や撮動、排気ガスが発生し、依然として沿道環境の悪化が続いている。 また、都市内においても道路は慢性的に渋滞し、鉄道の混雑も極端な水準に達している。
被害を生み出す自動車の交通を抑制するには、規制によって経済活動の水準自体を抑制すべきだという議論がある。 その典型は、大都市に対する成長管理政策である。
大都市、とくに東京は過密であるといわれる。 人口や産業の集中にともなう外部不経済がさまざまな場面で発生している。
その対策として、東京への新規の事業所立地を規制したり、東京の容積率を引き下げること(いわゆるダウンゾーニング)によって、人口や諸機能の東京への新たな流入を阻止し、東京の住環境を守るべきだと主張される。 これは、成長管理政策と呼ばれる。
これをマクロ経済にも応用すると、経済成長率をコントロールすることによって、環境を守るべきとする議論が提起される。 しかしこの種の議論は、経済成長や都市集中によって発生する外部不経済は、経済成長や都市への集中そのものの抑制によってしか達成できないことを前提としている。
それらは、成長や集中がもたらすさまざまな利益を考慮していない。 経済成長は所得を増大し失業率を減らし、治安を改善する。
都市においては、土地を集約的に利用し、集中を促すことによって、安全で、環境の良い都市を実現するための公共スペース(道路や緑地帯)を生み出すことができる。 他方、集中にともなって発生する混雑現象や環境の悪化は、経済学では、技術的外部性の問題と呼ばれる。

このような技術的外部性が存在することは、交通・輸送活動にともなって発生する社会的費用が、沿道住民や他の交通サービスの利用者に及ぼす被害額だけ、私的費用を上回ることを意味する。 この被害額を外部費用と呼ぶが、望ましい資源配分を実現するためには、交通輸送サービスの需要者に私的費用だけでなく、外部費用を含めた社会的費用を負担させなければならない(第二章補論参照)。
したがって、重要なことは、成長や集中の利益をできるだけ増大させるとともに、成長や集中にともなう外部不経済を内部化する手段を採用することである。 そのために、外部不経済の発生者に外部費用を負担させることが、効率性および公平性の観点から必要である。
以下では、都市交通による外部性を内部化させる手段を検討し、望ましい都市混雑対策と自動車交通抑制策について考えてみよう。 沿道環境の悪化を防ぐ方法は、経済活動によって生じる被害が全国的に及ぶものではなく、ある地域で限定的に発生したり、ある地域にとくに大きな被害をもたらす場合がある。
都市環境問題は、地球環境の問題とは異なり、被害はその地域に限定されている。 自動車の交通によって発生する騒音や粉塵は、沿道の住民たちには著しい不利益をもたらすが、沿道から比較的離れた地域の住民に対しては、それほど深刻な影響を及ぼさない。
たとえば、東京の環7通りなどの幹線道路においても、沿道の一列目ないし二列目の住居は騒音の水準は高いが、沿道から10Omほど離れた住宅地では、騒音の水準はかなり低減する。 したがって、それより背後の住宅地では、道路騒音からはほとんど影響を受けないと考えられる。
また沿道の自動車交通から生じる粉塵などについても、風向きによる影響などもあるが、沿道からかなり離れた地点では、その被害はほとんど無視できるほど低い。 このように、地域に固有の被害が発生している場合には、その地域での自動車交通に課徴金を課す必要がある。

自動車走行量の低い地域では、被害は無視できるほど小さい点を考慮すると、とくに人口や産業の集中している都市内での走行にかぎって、自動車の走行に課徴金を課す必要が生じる。 たとえば環7通りの沿道や幹線道路の走行に対してのみ、騒音から生じる被害額を計算し、その自動車一台の追加走行による被害額だけ幹線道路の自動車利用者に課徴金をかけることが考えられる。
環7通り以外の道路の交通利用者は、この課徴金を負担する必要はない。 この意味で課徴金は、地球温暖化対策としての炭素税やガソリン税とは、性質が異なるものであり、炭素税は沿道環境問題の解決策としては有効ではない。
これまでは、被害の発生している特定の区間において、特定の時間だけ自動車交通に課徴金をかけることは、技術的な問題があるとされていた。 これも現在では、自動車料金収受システム(ETC)の導入によって克服されようとしている。
非効率な都市インフラが交通渋滞をもたらしており、交通渋滞によるさまざまな損失は都市部に集中している。 警視庁の調べによると、道路の渋滞による時間損失は、金額計算で年間一二兆円にも及ぶ。
混雑による渋滞時には、排出量も増加する。 なぜなら、ZOMやMは低速運転時に排出量が増加するからである。
もちろん交通渋滞は、道路の利用者に対して交通容量が著しく不足しているために生じる問題である。 道路だけでなく、毎日の通勤電車に見られるような非人間的な混雑状態は、多大な社会的費用を発生させている。
社会的な混雑がもたらす大きな歪みを除去するためには、とくに道路、鉄道を中心としたインフラの利用に対する混雑料金制を導入する必要がある。 現在、首都高速道路、阪神高速道路、高速自動車国道などでは、季節、時間帯、混雑の如何を問わず料金を均一にする制度が採用されている。

これでは、道路利用を平準化するインセンティブを運転者に対して与えず、混雑を促進している。 鉄道や高速道路におけるピークロード・プライシング(時間差料金制)を導入するとともに、大都市を中心として、一般道でも、ITを利用した課徴金システムを確立し、混雑料金制を導入すべきである。
鉄道のサービスでいえば、Jや私鉄では入札・改札が完全に電子化されているために、時間別にこれらの料金体系を変えることは非常に簡単である。 混雑時の鉄道利用コストが大きくなるため、時間費用の高い人(忙しい人)以外は、その時間を避けて通勤するようになる。
また、現状のように通勤費用が企業の負担になっている場合には、企業は重くなった負担を回避するために、フレックスタイム制を導入するようになるだろう。 このような負担に耐えきれない企業は、郊外や地方に進出し、通勤費用の低い労働者を雇用することになる。
その結果、東京の一極集中が抑制され、地方の活性化にもつながる。 右に述べた混雑料金制の導入を提案すると、「いまでも十分に高い高速道路の料金を上げるなど言語道断」とか、「いつも混んでいて高速で走ることができないのに、なぜ料金を上げるのだ」といった反論が返ってきそうである。
混雑料金ではなく、逆に十分なサービスが得られないのだから、損害賠償してもらいたいくらいだ、というのが人情であろう。 実際、Jや他の私鉄では、一定の時間以上の遅延があった場合には、消費者に特急料金や、新幹線の料金が払い戻される。

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